今読みたい日本インテリアデザイン史、内田繁さんの「茶室とインテリア」は、安宅和人さんの「シン・ニホン」で語る日本の再生戦略との共通点が見られ、非常に面白かったです。
この本は、代官山TSUTAYAで面白そうな本がないか探していた時に見つけた本で、ちょうど茶道を初めて間もない時期だったので、茶道についてより知見を深めようと思い手にとったのですが、想像以上の良書でした。
まさか、2005年時点で語られる日本のインテリア分野と、この2020年に語れらる日本ビジネス分野との間に、同じエッセンスが入っているとは思いも寄らなかったです。日本人の歴史的文脈から引き継がれてきた特性、性質というものは、私たちの中に思った以上に根付いていて、そこを意識的に伸ばすことが、これからの私たちのクリエイティビティに大きな影響を与えていくのだと感じました。
「見立て」という言葉、みなさん聞いたことや使ったことがあると思います。この「見立て」というのは、「別のものになぞらえる。仮にそのものと見なす。」という意味があります。この「見立て」の歴史は、中国から伝来した漢字を万葉仮名として「見立て」てアレンジした時から始まっていたと言います。一番の発展は、江戸庶民文化の浮世絵や歌舞伎の時代で、浮世絵も歌舞伎も、歴史的事実や故事を当世風にアレンジした「見立」です。現代風に言うと「パロディ」とも言えます。
造園の領域でも、日本庭園は自然を模した縮景として「見立て」て作庭されてきた歴史がありますし、茶湯でも道具を食事用のお椀や洋食器のボウルを茶碗として「見立て」て活用する、意外にも柔軟性に富んだ、とてもクリエイティブな精神性があります。
内田繁さんは、こういった文化的文脈から
見立てによって自分たちの暮らしに適合させると言うのが、日本文化のそもそものスタート
と語っています。
そして、現代の日本人はこの「見立て」の能力を喪ってきてしまっているとも言っています。「見立て」には「想像力」が大事であり、だんだん私たちは楽をして、西洋から輸入されてきた文化をそのまま丸呑みにしてしまっている。本来はこの輸入されてきたものに、「見立て」と言う想像力を働かせて装飾させていくことで、新たな価値や文化の膨らみが生みだすことが日本人の文化的創造であると言うのです。その上で、内田さんは、今こそ日本の文化的背景を学ぶ必要があるとも言っています。日本人としてのルーツやアイデンティティを知り学ぶことで、私たちの暮らし、特に密接に関わりのある、西洋化した衣・食・住を「見立て」直す必要があると本書を通して教えてくれています。
一方「シン・ニホン」の安宅和人さんも、本書の中でデータ×ITの産業革命が起き、次はテクノロジーの『応用』のフェーズに突入し出した現在、日本はかつての黒船来航時の鎖国と同じ状況にあると言っています。情報量・データ量とAI活用が世界の産業を大きく変えていく中、日本はGAFAMを中心とするアメリカ企業や、中国やインドなどの人材が豊富で発展の目覚ましい各国に遅れを大幅にとってしまっており、世界の産業革命の波に完全に呑まれている状況なのです。そんな危機的状況ではありますが、そもそも日本は、0→1を作るよりも、1を何倍にも発展させるのが得意であり、これから逆転できる可能性は大いにある、と安宅さんは勇気づけてくれています。それはかつて日本が、エネルギーや電力の導入による「電化製品」や「自動車」「新幹線」などで世界を席巻した、あの日本の力を再び発揮していけると。つまり、日本の真の力は、単純な器用なものづくりだけではなく、この「データ×IT」テクノロジー産業をどうやって活用していくか、今のフェーズでこそ発揮されるべきだと。その上で、安宅さんは「妄想力」が大切であると教えてくれています。日本特有の「アニメ」は、私たち子供の頃から触れられてきたことにより、豊かな創造性を与えてくれていると言います。ドラえもんの異次元ポケットから出てくるたくさんの便利な道具や、手塚治虫の哲学的でありながら歴史や近未来を描く秀逸な物語。宮崎駿が作るジブリ映画の不思議で楽しいストーリーと美しい描写。ワンピースを代表する少年漫画や青年漫画の成熟した複雑で魅力ある世界観。こう言ったものは世界でも高く評価され非常に魅力的な文化として認知されています。この力を安宅さんは「妄想力」とし、テクノロジー×「妄想力」で、既存の産業にイノベーションを起こして行こうじゃないか!と若者に発破をかけてくれています。
内田繁さんの言う「見立て」の力と、安宅和人さんが言う「妄想力」の使い方は、非常に近い文脈で語られているんじゃないと感じます。
本来、日本人に古くからカルチャーとして根付いていた「見立て」による妄想力(想像力)を発揮し、輸入されたプラットフォームやテクノロジーを使って、新たな産業価値や文化価値を産み出して行くことが必要だと言うことです。
このお二人が言いたいことが解ったとして、じゃあ我々一般ピープルはどうすれば良いの?と言う話なんですが、この部分の考察は、ビジネス系 YouTuberの「サラタメさん」の考察が個人的に一番好きです。
シン・ニホンの内容も非常にわかりやすく解説してくれていますが、最後のサラタメさんの考察が、とても秀逸なのでぜひ見てみてください!
個人的には、今来ているプラットフォームにとにかく乗っかっていく、と言うことと、日本についてもっと学び、テクノロジーとの掛け算でどう自分の仕事に活かし、価値を産み出していくのか、ということを造園の分野で考え実践していこうと思いました。
翻って、自分の居る住宅業界、造園業界の立場に立って現状を見ると、人口減少に伴い、新築住宅棟数は減り続けています。また、若者のマネーリテラシーがこれから向上し、働き方・生き方がさらに柔軟性を纏っていくことも考えると、持ち家思考は今ほど定着して来なくなるのではないかと考えています。すでに、限られたマーケットは顧客の奪い合いであり、単純な良いものづくりやサービスだけでは競争に負けてしまいます。負けないにしても、唯一無二にはなれないかもしれません。
新しいテクノロジーを使って、どう家や庭や自然を「見立て」て日本的文脈を捉えて、普遍的価値と新しい価値として提供していくのか。改めて住まい、造園や日本文化を学ばなければいけないと感じました。